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2006-10-25(Wed)

ふと……。

 
 思いついた投稿作のネタは、珍しく男の子が成長する話。
 頭のどこかに電撃を狙っているのかしらん……。
 スケールをどこまで広げればいいのか、ちょっと悩む。
 もうちょっと形が出来上がりましたら、以前のようにプロットから組み立ててやっていこうと思いますです。
 結構王道? 


 ともかく、文章の練習は続けていきたいなぁと思いますです。
 でもそろそろ実話シリーズも止めないと、ネタがなくなって恋話になっちゃいそうだ。
 NO.8

 私は腕時計の時間を確認した。十一時十五分だった。うん、余裕がある。
 すぐさま自転車のハンドルを握り直した。
 風が気持ちいい。
 逃げ水現象を追いかけるように、私は腰を上げ力一杯、ペダルを漕いだ。
 十一時半には、仕事場に着けるだろう。
 今日の勤務は遅番なので、十二時半からの勤務になる。
 三十分前には私の職場である、フロントのバックヤードに行くことにしている。
 宿泊の予約やホテルの状況、場合によっては電話番など、忙しい時があるからだ。
 特にそういう決まりはなかったが、最年少という立場もあって、私は早めに職場に向かっていた。 
 だから一時間前である十一時半には、ホテルに着いておきたい。
 制服に着替えて、休憩室でのんびりする時間がほしかった。
 もう、ロータリーと呼ばれる円形の交差点が見えてきた。予想より早く着けるかもしれない。
 サドルに腰を落とし、足の力を緩めた。上げっていた息を整える。
 道は緩やかな下り坂になっている。
 もう足でペダルを漕がなくても一定のスピードで、自転車は前に進むことが出来た。
 影の隙間から差し込む光に、顔をしかめる。今日も暑くなるだろう。
 私は陽に気を取られつつも、歩道を自転車で走っていた。
 歩道が切れ、道路を横断する。
 あと二メートル程でまた、歩道に入ろうとした時、右側の視界が動いた。
 反射的に私は右側を向く。運転手のおじさんと目が合った。
 目の前には、ボンネットがある。私を包み込むように大きい。
 ぶつかる。避けられない。
 私の自転車めがけて、車は突進してきていた。
 足に力が入らない。
 自転車のスピードを上げることは不可能だった。このままだと、右足がまともに車にぶつかる。
 そう思った私は、両足を思いっきり上にあげた。
 その瞬間、車は自転車にぶつかった。
 その衝撃で自転車の存在感が無くなり、私はボンネットの上に両手をついて、しがみつく。
 おじさんもすぐにブレーキを踏んだのだろう。
 わたしは車に引かれることなく、地面に尻餅をついた。手に小石が刺さり、肘がこすれる。
 目の前には黒いタイヤと、バンパーがあった。
「大丈夫か?」
 おじさんが降りてきて、私の様子を見る。
 私は起きたことが信じられずに、呆然としていた。
 おじさんは自分の車から自転車をよけ、脇に置く。
 自転車はタイヤがねじ曲がり、前輪は原形をとどめていなかった。ハンドルは上を見上げた形になっている。
 背後からも大丈夫かという声が聞こえてきた。振り向くと、道路の向かい側にあるガソリンスタンドの店員が、私を心配そうに見ていた。
 良かった、今日はスカートじゃなくて。私なりに状況を理解すると、そう思った。
 そして気がつけば、体が震えていた。
 何も答えない私を心配したのか、ガソリンスタンドの店員が傍に来てくれた。怪我がないかどうか何度も聞いてくれる。
 私はやっと声を出せた。
「だ、大丈夫です。そんなにスピード出てなかったみたいだし……ありがとうございます」
 店員は私の無事を見て安心したのか、おじさんの方に向いて声を荒げた。
「おい、じいちゃん。アンタ、何度目だよ。いい加減にしろよ?」
 おじさんは店員には目を合わせず、ぶつぶつ文句を言っている。
「前もやったよな? 人を怪我させて、何考えてんだよ」
 店員はまるで自分のことのように言ってくれた。私は少しずつ、落ち着くことが出来た。
 そんなやりとりを見ていて、私には時間がないのを思い出す。
 深呼吸してから、私はゆっくり立ち上がった。腕のすりむいたところや足に鈍い痛みはあるものの、大きな怪我はなかった。
「あの、もう大丈夫です。ありがとうございました」
 私は店員に向かってお辞儀をする。店員は心配そうに私を見ると、おじさんにこういってくれた。
「アンタが悪いんだから、ちゃんと弁償しろよ。君も気をつけてね。なんかあったら言ってね」
 そういって店員さんはガソリンスタンドに帰っていった。
 世の中、本当にいい人はいるもんだと改めて感謝する。
 私は現実に帰ると、おじさんのほうを向いた。
 おじさんは怒られる怒られるとつぶやいている。
 ともかく今は自転車を何とかしなくてはいけない。そして時間はあまりない。
「あの、自転車は弁償してくださいね。そっちが一停で止まらなかったんですから」
「ちょっと待って。ぼくの奥さんに会ってくれないか、自転車もちゃんと弁償するから」
「私、時間がないんですけど」
「後で送るから。ちょっとだけ。会ってくれないと、自転車の弁償も出来ないんだよ。お金は奥さんが持ってるからさ」
 時計を見ると、十一時三十分だった。もうゆっくりも出来ないが、自転車も直してもらえないと困る。
「わかりました」
 私が頷くと、おじさんは自転車をトランクに乗せた。私も渋々後ろに乗り込む。
 数分もしないうちに、おじさんの家に着いた。
 庭の広い、二階建ての一軒家だった。壁にはヒビが入り、屋根は日焼けしている。私は昔のおばあちゃんの家に似ているなと思った。
 私が車から降りる頃には、おじさんと一緒に奥さんらしき人が家から出てきた。
「どうしたの? 大丈夫? アンタ」
 私を見ながら、奥さんが声をかけてきたので、頷く。
 それを見ていたかどうかもわからないような切り替えの早さで、奥さんはおじさんを叱った。
「アンタはどうしてそうなの? もうちょっと気をつけなさいよ」
「ごめんよ。この子が急に飛び出してきて」
「そうなの?」
 奥さんが私のほうを向く。
「いいえ、この人が一時停止をしなくて、飛び出たんです」
「アンタ、こう言ってるじゃないのよ。ホントにどうしようもない人だね、いつも気をつけていないから……」
 なんか長くなりそうな気配だ。このままではもしかすると遅刻してしまう。
「あの、これから仕事なので送って下さい。もう時間がないんです」
 私はふたりに割り込んで話した。とてもじゃないがつきあっていられない。
「ちょっと、アンタ仕事しているの? 学生じゃないの?」
「時間がないんです。送れないのならタクシーを呼んで下さい」
「わかった、わかった。今送るから」
「では、すぐお願いします」
 そういうと私はまた、車に乗りこんだ。外ではまだふたりで話をしている。
 自転車を下ろそうとするおじさんを私は慌てて止めた。
「自転車はこっちで修理します。ちょっと変わった自転車なので、他のお店には部品が無いんです」
 それを聞くとおじさんは頷き、自転車をトランクに乗せたままにした。
 また奥さんと何か話してから、やっとおじさんは車に乗った。
 だがエンジンはかけない。何かメモ用紙に書いている。
 時計を見ると十二時になっていた。もうぎりぎりの時間だった。
 しばらくして、メモを渡される。そこには名前と電話番号が書いてあった。そして私の連絡先も聞かれ、教える。
「じゃぁ、修理代がわかったら連絡して」
「はい」
 おじさんのゆっくりとした態度にいらついていた。私はわざとらしく何度も腕時計を見る。
 やっとエンジンをかけ、車が動き出した。
 奥さんが無邪気に手を振っていたのを見て、さらにイヤな気分になった。

 その後私は多少遅れたものの、仕事に遅刻をすることはなかった。
 休憩の時に自転車やさんを呼び、曲がった自転車を引き取ってもらう。
 学生からの知っている自転車のおじちゃんは、優しく私のことを心配してくれた。
 すごく嬉しかった。
 うわべではなく、心からの言葉に私は癒された。
「でも、怪我が無くて良かったね。こんなに曲がるなんてそうそう無いよ」
「そうですね、不幸中の幸いで」
「……で、相手の連絡先は?」
「あ、教えてもらいました。弁償してくれるそうです」
「当然だよ、こんなひどいことして。連絡先、教えて」
「え? どうするんですか?」
 思わぬおじちゃんからの言葉に、戸惑う。相手を知ってどうするんだろう。
「ぼくのほうから請求しておくよ。ほら、こういうのはわかんないだろう?」
「あ、そうですね。すいませんが、お願いします」
「もし、向こうからなんか言ってきたら、ぼくに教えて。証言もするし、力になるから」
「すいません。でも、弁償するって向こうも言ってるんで大丈夫だと思います」
「そうかい。じゃぁ、仕事がんばってね」
「はい、お願いしまーす」
 私は笑顔でおじちゃんと別れた。
 心につっかえていたものが、おじちゃんのおかげでとれた。
 
 
 

 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 結局その後、おじさんは「自分は悪くない」と駄々をこね、私の家まで押しかけてきました。
 なぜか私のいない時に来るので、私の両親とおじさんとの話は平行線のままもめることに。
(だって、年頃の娘は家になんていないでしょ~?)
 最終的には裁判するぞと脅されたのですが、こちらにはガソリンスタンドの店員さんや、自転車のおじちゃんが証言してくれると言ってくれたので、その事をおじさんに言うと静かになったそうです。
 弁償はきっちり自転車のおじちゃんがとってくれました。
 
 この時にしみじみ色んな人がいるんだなぁって思いましたとさ。

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