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2006-11-05(Sun)

そういえば

 書き続けることが大切よね。
 そうしないと、進むことは絶対にできない。


 続きはもしかしたら、ここにはなかったものかな?
 ちょこけーき。リテイク版。

 
 教室は平和なざわめきに満ちていた。日差しが教室を区切るように差し込んでいる。
 午後の休息を、みんなは有意義に過ごしていた。
 雑誌で語らう者、弁当じゃ足りずにお菓子を食べだす者、校庭でサッカーをしようとする強者や、馴れ合いを遮断して眠りにつく者など、様々だ。
 刻一刻と過ぎていく貴重な時間を、オレは漆黒の物体によって遮られてしまった。
「じゃーん! のんちゃん、とくせいチョコケーキなのですぅ」
 のんちゃんと名乗る信子は、オレの目の前でくるりと一回転した。柔らかな香りと共に、スカートが舞う。
 見上げると両手をあごにつけて、信子は笑顔を向けていた。頭上にまとめた二つの髪が、一息置いて信子の肩に落ち着く。
 不意にクラスの視線を独占したオレは、今日十五回目となるため息をついた。
「何度も言うが、オレは甘いものが嫌いなんだ、信子」
「本名で呼ぶ、ナァ!」
 信子は一瞬で顔面にしわを寄せ、白目率80%でオレを睨みつけていた。
 あごにまでしわが寄っている。オレは微動だにせず信子の顔を眺めていた。
 静寂に包まれる教室。
 一息おいて信子はまた回転し、何事もなかったように鼻歌を歌いだした。
 オレが動じないことに信子も慣れてきたらしい。
 やれやれと思った瞬間、信子はおもむろにチョコケーキを素手で掴んだ。
 そしてケーキをオレの前に差し出す。ツンと甘いチョコの香りが鼻にかかった。
「おい、ちょっと待て。普通切り分けるとか、フォークを使うとかあるだろう」
「そんなめんどうなことはなしです。直人くんがそっちからたべてー、私がこっちからたべるのですー。いやーん、えっちー!」
「んなことするか!」
 オレは思わず即答し、動揺してしまった事実にショックを受けた。
 未熟だな。こんなことで反応してしまうなんて。
 落ち込むオレを無視して、信子は恐ろしくテカリを放つ黒い物体を押しつけてきた。
「……溶け始めている」
 信子は目が据わったままオレを見ている。指先がケーキに沈みかけていた。
 コレをマジで食うのかよ。
 溶けかかったチョコの感触が嫌なのか、信子の腰は引けていた。腰がくの字に曲がり、間抜けな格好になっている。
 だからフォークを使えと言ったんだ。手で掴む奴が間違っている。
 だがこのままだと、ずっと目の前にチョコケーキを差し出され続けることになるだろう。それはかなり困る。
 仕方なくオレは両手でケーキを受け取った。ぬるりとした食べ物らしからぬ感触に、背筋がピンと伸びる。
 沈む指先。
 チョコケーキは長くはもたないだろう。
 オレは恐る恐る口に含んだ。 
 思った以上に甘くなく、カカオのほろ苦さがほどよく溶け込み口の中に広がった。甘いものが嫌いなオレでも食べられる味だった。
 まともだ。
 拍子抜けな感覚を味わいながら、顔を上げた。信子と目が合う。
 信子はチョコまみれになった手を合わせて、祈るように見つめていた。
 どこか怯えたように見えたが、気のせいだろう。
 普段からしつこく付きまとっている、つけを返せるチャンスだ。
 くそまずい、と言おう。
 だが口から出た言葉は、オレの許可なく形を変えて出てしまった。
「まぁ、食えるものだな」
 無音。反応なし。
 アレ? 聞こえなかったか?
 怒鳴るか、叩かれるか、騒ぎ出すかと様々な反応を考えていたオレは、この反応に戸惑った。
 思わず信子の顔を覗き込む。すると、信子の大きな目からこぼれ落ちているものに気が付いた。
「良かった。すごく、うれ……しい」
 信子はチョコまみれの手で顔を覆い、しゃくりあげた。
 コイツも女の子らしい。意地悪なことを言わなくてよかった。
「今度はフォークぐらいもってこいよ」
 オレはもう一口、ケーキを食べた。

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