2006-11-10(Fri)

 食前にリンゴを食べる。

 そういうダイエットをしています。あとは晩ご飯のカロリーを抑えるとか(野菜スープだけどとかね、もちろん具だくさんよ♪)
 でもまぁ、ちっとも痩せません。
 ダイエットって根気だよなー。

 昨日はただ趣味に走った話でしたね。
 ホントおままごとみたいのしか書けないなぁ……。
 でも昨日、メッセで。
「さりはさんは修羅場を知っていそうだ」とも、言われました。
 どうなんでしょう。結構みんなすごい修羅場とかくぐっていません?
 私のはたぶん、あまっちょろいほうだと思うけどなぁ……。人生をなめているもんなぁ。
 
 まぁそんな流れで浮かんだ話。もちろん、フィクションです。
 今日もただただ習作でございます。
 手が汗ばむ。私は何度も自分のひざで汗を拭いていた。
 身勝手な彼に別れを告げようと決心したのに、私は心のどこかでまだ迷っている。
 でもたぶん、後戻りはできない。
 私は彼の部屋にいた。この部屋に来るのも今日が最後になるだろう。
 十二畳のワンルームにはベッドと小さな整理棚しかない。夕焼けに染まった部屋はいつもより広く感じた。
 彼は私の顔を見ることなく、コーヒーを淹れていた。苦いコーヒーの香りが私の体に巻き付いてくる。
 なんと言えばいいのだろう。
 どう言ったら、傷つけないで済むのだろう。
 色んな台詞を考えては打ち消した。結局どんな言葉も彼を傷つけることには変わらない。
「どうしたん?」いつもより明るい彼の声。
 いつもはマグカップなのに、今日はコーヒーカップにソーサーもつけてくれた。
 カチャカチャとコーヒーカップが震えている。まるで彼が怯えているようにも感じた。
「あのね……」
「まぁ、飲めよ。久々に飲むだろ? オレのコーヒー」
 コーヒーカップを両手で包みながら、私は中を覗いた。薄い茶色がかったクリーム色、彼は私の好みをちゃんと覚えている。
 甘い物を食べる時にはブラックで、そのまま飲むならミルクを入れる。そんな細々した彼の優しさが、私には辛い。
 大好きなコーヒーなのに、今は飲みたくなかった。
 それは彼への罪悪感だ。わかっていても認めずにいた。
 夕日が沈みかけている。長く伸びた影はまるで私の心のようだ。じわりと闇が侵食するように彼を苦しめてしまうだろう。
 なら、なるべく短い方がいい。
「あのね……好きな人が出来たんだ」
 コーヒーカップが鳴った。彼も飲みたくないのか、床にカップを置く。
「オレの知ってる人?」
 私は何も言えずに、首を横に振った。
 本当は言い訳だった。好きな人なんていない。
 だけどこのままだったら、私たちがダメになっていくように感じていた。
 相手を頼り切って、ぶつかり合って、だらだら流れていく、そんな毎日が嫌になった。
 お互いに夢があったのに、目を向ける気力もない。金銭的にも精神的にも朽ちていく自分が怖くなった。
「ごめんね」
 これが精一杯の言葉だった。もう言葉は見つからない。
 彼は俯いたまま、自分の手を見つめていた。たぶん、彼が見ているのは手ではなく、今までのことを思い浮かべているのだろう。原因を探って解決しようとしている。
 彼は自分の思い通りにいかないと癇癪を起こす。だからきっと私を責めるだろう。
 でも、そのほうがいい。
 振られた側が被害者で、振ったほうが加害者。そのほうが傷が浅い。
 私は黙ってその時を待った。
 
 すっかり部屋は闇に包まれている。
 彼のほうを見ても、ぼんやりとした輪郭にしか見えなくなっていた。
 たぶん混乱している。このまま距離を置いたほうがいいだろうか。
 私は静かにコーヒーカップを置いた。結局、彼の淹れた最後のコーヒーは口を付けることはなかった。
 ゆっくり立ち上がると、彼のシルエットが私を見上げた。
「今日は、帰るね」
 ぽつりと声をかけて、私は彼に背を向けた。足音を立てずにゆっくりと歩く。
 背後で物音が聞こえた。その瞬間、私の足に何かが絡みついた。
 それは彼だった。彼が私の足にしがみついている。
「行かないで、お願い。おまえがいなくなったら、オレ、生きていけないんだ、頼むよ!」
 私は突然の出来事に倒れそうになった。慌ててバランスをとりながら壁に手をつき、こらえる。
「なんで? オレの悪いところ直すから、ね? お願い」
 彼の表情は暗くて見えない。だが泣き声が混じっていた。
 わたしは何も言えずに、ただ彼のシルエットを見つめる。心の奥底からどろりとした感情がわき上がってくるのを感じた。
「おまえだけなんだよ、おまえ以外に考えられないんだ。ちゃんとおまえの言うとおりにするから、な? やり直そう」
「言うとおり?」
 自分の声が震えている。大切に守っていたなにかが壊れていくようだった。
「あぁ、頼む。ちゃんと言うこと聞くから、な?」
「そんな一方的なつきあいしてどうするの? 何を得るの? そんなの意味ないでしょ?」
「じゃぁ、どうすれば……」
「もうダメだからでしょ? そうやってプライドもなくしてすがって、どうするのよ」
「ダメって……」
「お互い自分のことしか考えられなくなったんだよ、だから……だから、このままじゃダメなんだよ。自立しなきゃ、誰かを支えられるくらいにならなきゃ、ダメなんだよ」
「わかった、これからはちゃんと考えるから。な? いいだろ?」
 私はかぶりを振った。そうやっていつもリセットをした振りをして元に戻る。
 今までのことが走馬燈のように蘇る。それは嫌な思い出しかなかった。
「ちゃんと考えるなら、私たちは別れなくちゃだめよ」
「そんな……。おまえこそ勝手じゃないのか? 急に、言うなんて」
「私はずっと考えていた。あなたは何度も嘘をついて裏切ったじゃない。だから……」
「嘘は謝るよ、だけど裏切ったんじゃない、誤解だ」
「あなたは自分のことしか考えていない。こんな状態で引き留めてなんになるの?」
 コーヒーカップの悲鳴が聞こえた。壁に向けて蹴られたのだろうか、鈍い音とともに砕け散るような音だった。
 私はざわざわと冷え込むような恐怖を感じた。彼はそうやって本能的に行動することがあったからだ。
 このまま外に出られないかもしれない。だけど、心に溜まったものを吐き出せた分だけ清々しく感じていた。
 ここからは一歩も退けない。退いちゃいけない。
「お互いに腐っていくって意味がわかった? 甘えてるの。自分勝手になっているだけなの」
「納得できない」
 彼がすんなり理解するとは思ってなかった。だから予想した答えだ。
 彼は振られた自分が嫌なのだ。
 自分の思い通りにいかないのが嫌なのだ。
 相手は私じゃなくてもいい。 
「お互い一人になって冷静になったほうがいいと思う」
「でも、おまえ、もう会ってくれないだろう? 会う気ないだろう?」
 どうして、そんなわかりきったことを聞くのか。
 別れを切り出したのは私だというのに。こんな状態の何を期待しているのだろう。
「私だって気が利かないし、わがままだし自分勝手よ。だから、一人になって自立しようと思う」
「おまえだって今、嘘をついたじゃないか! 好きな人がいるって」
「だから?」
「なんでオレばっかり嘘つき呼ばわりされなきゃいけないんだ!」
「そうね、私も嘘つきよ。だから?」
 彼のシルエットは私を見上げたまま黙っている。少しずつ足に絡んでいる手の力が緩まってきた。
 だが彼は突然立ち上がると、私の襟首を掴んだ。息苦しく首に服がこすれて痛い。
「オレをバカにしているのか? あ?」
「どうしてそうなるの? 事実しか、言って、ないのに」
 彼は襟首を掴んだまま持ち上げようとする。息苦しさよりも首の根の痛みが増した。
「あなたが浮気したのがわかっても、私は何も言わなかった。自分にも非があると思っていたから。
 友達の悪口だって会社の愚痴だって、黙って聞いた。
 だけどあなたはどうして、友達があなたにそんなことしたかわかる?
 会社の人があなたにどうして、冷たく態度をとるのかわかる?
 今の私にはよくわかる。あなたがどういう人なのかも、そして、まわりの人のほうが正しいってことも!」
 私は思いっきり彼の顔を叩いた。仰け反るようにしてがむしゃらに叩く。
 痛みに負けた彼が手を離した。その隙に私は玄関に出て、外に飛び出す。背後から彼の泣き声が聞こえた。
 
 振られたほうだけが傷つくんじゃない。別れは両方傷だらけになるんだ。
 私も泣きながら、家に帰った。耳には彼の泣き声が残っていた。

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