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2007-02-15(Thu)

久々。

 だいぶお久しぶりな小説でございます。
 一年ぶりっすね、のんちゃんシリーズです。
 シリーズといってもまだ二作目ですけど……。
 今日は雪はねで疲れたのか、途中途中意識が飛びつつ書き上げました。
 ではでは、続きを読む でどじょー☆
 教室はゆったりと漂う笑い声に包まれていた。
 外の寒さと反比例するように、ここは心地よい。
 級友たちはそれぞれ気の合う仲間と集まり、昼食の準備をしている。
平和だ。どこにでもある高校生活において、弁当の時間は癒しだろう。
 そんな貴重な青春の一ページを、オレは一人で見ていた。
 友達はいる、だがこの時間はいつも一人だった。
 ある事情によって、オレは一人で昼食を食べなければいけなかった。
「直人く~ん」
 奴だ。
 コイツのおかげでオレは一人で食べざる終えないのである。
 奴の声を聞くたび、オレはため息をついた。
 すらりと伸びた足に短めなスカートがオレの目の前に現れた。
 見上げると、今どき珍しいツインテールの赤めな髪に、オレを直視している顔があった。
 コイツを信子という。
 どうもオレに気があるらしい。
 信子はその場で一回転した。無意識にオレの視線は広がるスカートに向う。
 もうちょいなんだがなぁ……。
 だが信子はオレに楽しむ時間を与えることはない。すばやくスカートを押さえ、ポーズを決めた。
今日はあごの下に手を置くポーズらしい。
「のんちゃん、特製お弁当なのですー」
 そう言って、信子はオレの机の上に三段のお重を置いた。お重といってもお弁当用に作られたもので、手のひらぐらいの大きさだったが、でかい。
「信子、オレは……」
「本名で呼ぶなぁ!」
 顔中にしわを寄せた信子がオレを睨んだ。オレの顔との距離は約五センチ。
 目玉の白目率九十パーセント。細かな血管までくっきり見えた。
 教室にいる全員がオレと信子を見ているのがわかった。突き刺さる視線にオレもすっかり慣れていた。
 白目を見つめること八分。そろそろ目が限界に来た頃信子はゆっくり目を閉じた。
 いつものようにその場でくるりと一回転をする。
 軽く握った手をあごの下につけて、満面な笑顔でポーズを取った。
「直人くんったら、もー。さぁお弁当ですよー」
「オレには自分の弁当がある」
「のんちゃん特製ですよー。ほら、タコさんウインナーですー」
「いらん」
「もちろん、ご飯の上にメッセージ付きです。きゃ、読んじゃダメですよー」
「読まん」
「ミニハンバーグも入っているんですよー。ほら、ミッキーさんですー」
「興味ない」
「そして直人くんのお弁当はのんちゃんが食べちゃいます。だって、嫁ぎ先の味を覚えないとね」
「断る!」
 オレはしっかり自分の弁当を掴んだ。また向こうのペースにはまるわけにはいかない。
 だが、突然後ろから羽交い締めにあい、あっけなくオレの弁当は信子に取られてしまった。
「ちょっ、誰だよ!」
「ほらほら、そんなの強がらないで。嬉しいくせに」
「その声は川上だな? 離せよ!」
 暴れるとオレのまわりを四、五人男子が囲んだ。いつも遊んでいる仲間だ。みんなオレを凝視している。
 やっとの事で川上の手を振りほどき、オレは身構えた。
 仲間の様子がいつもと違うのは明らかだった。
「スナオジャナイナー」
「マァ、イイジャナイカー」
「なんだよ、その棒読みは!」
「オカネジャナイヨー」
「金かよ! おまえら、金で信子に釣られたな!」
 オレは信子を見た。信子は両手を腰に当て、ふんぞり返っている。
 その顔は金をばれてしまったことに多少罪悪感を感じているようだった。
「やり方が汚ねぇぞ!」
「失礼ねー、お金で人を買えるなんてぜーんぜん思ってないです。
ただ、ちょーっとお手伝いしてもらった、それだけじゃない」
「ともかくおまえの弁当なんていらねぇんだよ!」
「もう、素直じゃないんだからー。素直に食べてくれれば、何もしないわよ」
「うるせー、オレの弁当を返せよ!」
 信子はオレを見下ろしたまま、指を鳴らした。
「ノンチャンノ、オベントウ、オイシイヨー」
「タベナサイ。イイコダカラ」
「金の亡者め、うるせーよ」
「直人くん? 項羽の故事をご存じかしら?」
「……四面楚歌ってか? その手にのるかよ」
 信子はゆっくりと腕組みをした。まるで最後の猶予だといわんばかりな笑みを浮かべている。
「仕方ないわね……。仲間だけじゃ足りないのなら、お母様も……」
「は? な、今、何て……」
「とても気さくな方よね、お母様って。直人くんに彼女がいないことを気にしているご様子で……」
「ちょっ、ばっ。おふくろは関係ないだろ! 余計なことを……」
 信子はオレに箸を差し出した。その顔は勝利を確信した満面の笑みだった。
「じゃぁ、わかってるよね。どうぞ」
 オレは結局信子に負けてしまったのだ。家族を人質にとられては、さすがのオレも承諾するしかなかった。
「直人くんの玉子焼きって甘いんだねー。こういうのが好きなんだ」
 信子は俺の顔を覗きこみながら、話しかけてくる。俺は目を合わせることなく、信子の弁当を食べつづけた。
「かぼちゃに、煮豆かー。直人くんのお弁当ってヘルシーなんだね。半分以上がご飯で…」
 どうせ、オレの弁当は残り物だよ。おまえの弁当みたいにカラフルでもなけりゃ、肉モノはウインナーのみだ。
「お母様の愛情たっぷりだね。ちょっと羨ましいよ。ふりかけまで入ってるよ」
「……悪かったな、残りもんで」
「直人くん、こんな素晴らしいお弁当作ってもらってるんだから、お母様に感謝しなきゃいけないよ
。とても栄養があっていいお弁当よ」
 オレはなんとなく顔を上げた。信子と目が合う。
 そういえば、コイツって人の悪口とか言わない奴なんだと、思い出だした。
「お母様には、ちゃんと毎日感謝しなきゃダメだぞ」
「……あぁ、わかったよ」
 信子はさらに明るい笑顔になった。
 何もしなけりゃ、いい奴なんだがな、コイツも。
 オレは完食し、弁当を渡した。
 もちろん無言だ、無理矢理食べさせたのは向こうであり、他に言葉もないはずだ。
 だが、信子は相変わらずの笑顔で受け取った。そしてその軽さに驚く。
「え? 全部、食べてくれたの? 嬉しい、ありがとう」
 信子は空の弁当を胸で抱きしめている。語尾が少し濁った音だった。
 なんだか、コイツはすぐ感動するらしい。ったく、単純な奴だ。
「……まぁ、美味かったよ」
 オレも充分、単純かもしれない。

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