--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2007-03-14(Wed)

恋愛モノですが、感情の移り変わりがポイントかも。
いやまだ始まったばかりで、移っても替わってもいないけどww

それではいつもの通り、続きを読むにて本文です。
「いよぉう! バイト君」
そんな言葉と共に、ボクの体は思いっきり前へと押し出された。
よろけるボクの背後から聞こえてくる、トーンの高い柔らかい声。
「バイト君、相変わらずのやせっぽっちだね、ちゃんと食べなきゃいかんよー」
本当はボクはわざとよろけた。
塔野さんに笑ってもらいたくて、構ってもらいたくて、ボクは演じるのだ。
心の中がゆっくりとほぐれるのがわかる。素直に楽しいといえる時間だった。
バイト先でもあるシティホテルで、ボクはベルボーイとして働いている。
真っ白な大理石に囲まれ、ボクの目の前に広がるロビーは閑散としていた。
平日の午後はいつも無機質で寒々しい。
だけど、塔野さんが来ると、ロビーが眩しく感じた。
「塔野さん、ボクのとっておきの情報を教えましょうか?」
「えぇ? なになに?」
「ボクには金山って言う名前があるんですよ。しかも絶賛彼女募集中です」
「へぇー、そうなの。バイト君、知らなかったわー」
「ひでー、塔野さん、ひどいよー」
ボクは大げさにすねてみせた。
まるで子供だと感じつつも、塔野さんに注目してほしかった。
だけど塔野さんはボクの顔を見ることなくカウンターの下に屈むと、伝票やら宅急便の袋を手際よく取っている。
ボクは塔野さんの顔が見たくて、覗き込んだ。
肩までの黒髪を後ろで束ね、色白の横顔はほんのりとした色気が漂っている。
濃紺の制服が一層華奢に感じさせた。まるで脆いガラス細工のように、ボクには触れられない、遠い存在に見えた。
見惚れていたその時、立ち上がろうとする塔野さんと一瞬目があった。
潤みを帯びた瞳が、ボクの心臓を強く打つ。
ボクは思わずのけぞった。動揺した視線は窓の外へと逃げていく。鼓動が早い、自分の熱を感じて、戸惑った。
 そんなボクを見ているのか見ていないのか、塔野さんはいつも通りの調子で、話しかけてきた。
「そっかー、バイト君って彼女いないの? いるかと思ってたよ」
「まぁ、その……だからとっておきの情報だと」
「おぉー、そうか、そうか。がんばれ若人」
「若人って、塔野さんと同じ年じゃないッスか。誰か紹介してくださいよ」
ボクは妬ましく塔野さんを見た。塔野さんははにかんだ笑顔でボクを見ていた。
彼女なんてほしいとは思っていない。
ただどんなことでもいいから塔野さんと話していたかった。
塔野さんに繋がるものがほしかった。ただそんな理由だった。
「毎日暇ッスよ。塔野さんは休みの日、何してるんッスか?」
「なんだか唐突だね、まぁ色々だけど?」
「へー、忙しいんですね。いいッスねー、彼氏のいる人は……」
またボクは大げさにすねてみせた。
ボクはまたはにかんだ塔野さんの笑顔を見たくて、視線を上げる。
だけど塔野さんの姿を見て、頭の中が真っ白になった。
俯いて伝票を抱きしめている塔野さんは、さっきとは別人のように表情を失っていた。
塔野さんは顔を上げることなく、じゃぁねと言うと、フロントへ走っていった。
心臓を爪で引っかかれたように痛んだ。胸を引き裂きたくなるような衝動に駆られる。
ボクは塔野さんの背中を見つめることしかできなかった。



あれから塔野さんとは何度かすれ違ったものの、挨拶しかできなかった。
何となく避けられている……ボクにはそんな気がしていた。
それから数日してからのことだった。


続く。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

リンク
ツイッター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。