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2006-01-14(Sat)

昨日思いつた話。

 一番校内が活気立つ放課後、僕はいつものように部室のドアを開けた。
 薄暗い部室はひんやりとした孤独感が漂っている。
 だがどこか心地良く染み渡る感覚は、ここが自分の居場所だからだろう。
 僕は撫でるように本棚を見回し鞄を置いた。満たされた幸福感を深呼吸で調節すると、ドアの開く音がした。
「あ、修平君。みっけ! ノート忘れたでしょ」
 振り向くと隣の席の宮川がドアから顔を出していた。
「おぉー、さんきゅー」
「へー、これがマン研の部室かー」
 僕は宮川の手からすばやくノートを取る。
偏った言い方に、僕は正直な感情を浮かべていた。
「ここは文芸研究同好会。確かに漫画も研究材料だけど……」
 しげしげと部室を眺める宮川に向かって僕は訂正したが、あまり聞いていないようだった。
 珍しそうに眺める宮川は帰る気がないの様に感じがして、僕はさっさと負けを認める。
「見たいなら、入ってもいいよ」
「ほんと? ありがとー」
 宮川は飛び跳ねるように部室に入ってくると、調べ物をするか様に
本棚を凝視した。
 意外にも本に興味を持ってくれた態度が嬉しかった。僕のサービス
精神がくすぐられる。
「インスタントでよければ、コーヒーあるけど、飲む?」
 何気ない一言。
 僕にとっては気の抜けたどうでもいいことだった。
 だけどその時宮川は初めて僕の顔を見た。満面の笑顔は力強い。
「うん! ありがとう」
 僕は宮川のまっすぐな視線に叩かれ、回り右をしてコーヒーを淹れた。
「ねぇ、コーヒーで聞きたいことがあるんだけど……」
 宮川はマグカップを暖めるような優しい手つきで両手で包み込み、
愛しく黒い水面を見つけていた。
「聞きたいこと? コーヒーの種類とか? 効能とか?」
「ううん。そうじゃなくて……」
 僕の頭は答えを求めてフル回転する。知識には自信があったし、
何よりも文芸研究会同好会の部長としての意地があったからだ。
「じゃぁ、コーヒーの歴史とか? 成分?」
「ふふ、違う」
「コーヒーの出てくる作品とか? 分かった、美味しいお店とか?」
 宮川は笑顔のまま首を振る。
 僕の思考が止まったのを見破ったのか、僕を覗き込みながら言った。
「修平君。コーヒー、好き?」
 一瞬の間。僕のまぶたは何度も上下に移動し、口の形は円を描いて
いた。
「――う、うん。好きだよ」
「良かった。私も好きなんだ」
 宮川の屈託のない笑顔。
 僕の心に忘れかけていた想いが蘇り、熱くなった。

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